株式会社 鳳書院 ブックスオオトリ

 
 MENU
出版・書店なら、ブックスオオトリの株式会社鳳書院
 

教育ルポ つなぐ

HOME > リンク集 > 教育ルポ つなぐ

〈8特別支援教育②〉 安心して「助けて」と言い合える社会に

聖教新聞2025年1月28日付

 

 この人の仕事を一言で表せば、「つなぐこと」だろう。

 舞台は和歌山県の特別支援学校。知的障がいやたい不自由、聴覚障がいのある子どもが通っている。小学部の主事である山本秀子さん(副白ゆり長)は毎朝、6学年の各教室の様子を見て回る。

つなぐ


 保護者との連絡帳にも目を通す。わが子の成長を喜ぶ報告がある一方、不安や不満が行間から読み取れるものも。

 早めの対応が必要だ。職員室に戻り、電話の受話器を取る。保護者の番号にかけて「今、大丈夫ですか」。5分、10分、15分……話に耳を傾けるだけでホッとしてもらえるケースも少なくない。担任との間に〝誤解の糸〟がからまっていたら、一本一本、解きほぐす。

 放課後は、教員からの相談に乗る時間だ。「大変でしたね」と共感し、「どうすればいいかなあ」と共に考え、「◯◯先生なら大丈夫!」とエールを送る。すると教員は心が軽くなり、子どもや保護者と再び笑顔で向き合える。

 「つなぐ」とは対話をすること。〝気持ちを分かってもらえた〟と相手に安心してもらうこと。その確信を、山本さんは「特別支援教育コーディネーター」として働いた8年間でつちかった。教職員や保護者の相談窓口となり、幼稚園・保育園や小・中学校・高校、福祉・行政機関等と連携する〝かなめ〟の存在である。

つなぐ


 子どもの発達を切れ目なく支えるには、多様な大人のつながりが不可欠だ。とはいえ人間同士、方法論や課題の認識にズレが生じることもある。「だから地味で地道なようでも、『対話』が大切なんです」(山本さん)

 見る人は見ている。山本さんに一昨年、「文部科学大臣優秀教職員表彰」「きのくに教育賞」が贈られた。

 子どもの成長を、地域の大人が切れ目なく応援する大切さを教えてくれたのは、創価家族かもしれない。自身も幼い頃から、あらゆる世代の人たちに「秀子ちゃんには使命があるよ」と、温かく育ててもらった。

 わが子も少年少女部の合唱団時代から、どれほど励ましてもらったか。つながりは今も変わらない。山本さんが仕事のエネルギーを充電できるのも、学会員の先輩たちが話を聞いてくれるからだ。

つなぐ

つなぐ


 障がいの有無にかかわらず、人は一人では生きていけない。困った時は〝おたがいさま〟。〝困りごと〟も人それぞれ。伝え合わなければ、分からないことも多い。

 安心して「助けて」「つらいよ」と言えるつながりを持つ人は幸せだ。そんな関係性、そんな社会を築く心と力をやしなうことが教育の目的だと、山本さんは思う。特別支援教育とは、そもそも異なる一人一人を「特別な宝の存在」と見て、支え合うことの豊かさを、大人も子どもも共に学ぶ営みなのだ。

 山本さんは子どもたちに「困っている時は助けたいから、その時は『こうしてほしい』と言ってね」等と、言葉で、また校内に張り出す資料で、日頃から分かりやすく伝えている。児童の声、しぐさ、表情からメッセージをキャッチして、必ず応える。すれ違いがあったら「ごめんね」と素直に謝ることも忘れない。

 児童たちも助けてくれる。授業の準備を手伝ったり、勉強につまずいている友達をサポートしたり。そんな姿を見たら、「ありがとう!」「助かったよ!」と感謝のフィードバックも欠かさない。

 先日、山本さんはインフルエンザにかかり、学校を休んだ。小学2年の児童がお見舞いに届けてくれたものがある。「お店屋さんごっこ」で用意した〝食べもの〟という。

 職場に復帰後、改めて感謝を伝えた。「おかげで元気になったよ!」。その子の、うれしそうな顔といったらない。心がつながった瞬間だ。

つなぐ

つなぐ