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〈4管理職として〉「教員を支える」その先にあるもの

聖教新聞2024年10月16日付

 朝から文字通りの「フル回転」である。新潟県の公立小学校で教頭を務める近藤たつさん(本部長)の一日に密着した。

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 午前7時。出勤してすぐに校内の窓を開け、朝一番のきれいな空気を入れる。登校してくる児童の声が響き始めた。

 校内点検を終えて職員室の自席に座った近藤さんのもとに、一人の教員が歩み寄る。「体調がすぐれないので、病院に行きたい」という。近藤さんは立ち上がり、にゅうな表情で相手の目を見ながら話に耳を傾け、こう言った。「きょうの仕事はうまく分担するから心配しないで。健康第一で」

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 欠員の教員の代わりに授業も担当。職員室にいる時間は電話応対や校務分掌を行い、放課後には保護者や教員の相談に乗る。時間は、いくらあっても足りないほどだ。

 取材の合間、近藤さんと共に働く方々にたずねてみた。近藤先生は、どんな人ですか?

 髙島純校長はキッパリ言う。「目配りと気配りが素晴らしい。どんなに忙しくても、相手を包み込んでいける人です」

 ある教員も即答した。「何でも優しく受け止めてくれるんです。だからかげでは皆、〝仏の近藤〟って呼んでいます(笑)」

 一人一人に尽くす近藤さんの姿勢がつちかわれた原点は、学生時代にある。創価大学24期生。創立者・池田先生の姿から「心をくだく」とはどういうことかを学んだ。学生たちは、おなかをすかせていないか。体調は、大丈夫か。何か困っていることはないか。家族は元気でやっているか……そうした創立者のこまやかな心配りと励ましは、学生たちだけではなく、教職員にも及んだのである。

 〝後輩を自分以上の人材に〟との思いで、親身に関わってくれる先輩たちも大勢いた。近藤さん自身も〝誰かのために行動できる人に〟と願い、男子寮のサポート役である「残寮生」を買って出た。健康管理、勉学のサポートに加え、プライベートな相談事にも夜遅くまで乗った。

 「一人」が元気になれば、その一人に関係する多くの人も元気になっていく─この経験、この確信が今、「教頭の職務に当たる自分を支えているんです」(近藤さん)。

 教員不足、長時間労働……教員を取り巻く状況は予断を許さない。それは本来、教員にとって最も重要な「子どもとの関わり」にも、さまざまな影響を及ぼす。

 「働きやすい職場環境」と「教師としての働きがい」をいかに両立していくか。教頭として近藤さんが常に問い続けてきた問題意識だった。試行錯誤しながらも、よりよい教育現場の実現のために実践してきた「4つ」のことを教えてくれた。

 ①「感謝を伝え続ける」─朝の掃除、校地内の畑の管理など、教職員が厚意でしてくれることを決して見落とさないよう心がけ、感謝の言葉をかけ続ける。

 ②「スピード感をもって対応する」─児童同士のトラブル、保護者との連携など、教員から相談されたことにはじんそくに対応する。困っている様子を見つけたら共に解決に向けて話し合う。

 ③「ポジティブな『言葉』を贈る」─教員が作成した学級だよりを確認する際は、優れた点や工夫した点を必ず見つけ、付箋にフィードバックの言葉を書いて返す。

 ④「働きやすい環境の整備」─ICT機器や児童の欠席連絡フォームなどを導入し、教員の負担軽減に努めてきた。

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 教頭職は、〝職員室の担任〟といわれる。学級担任が教室の子たちに献身する立場なら、教頭は〝教員を支える仕事〟だ。「児童と生き生きと向き合える教員集団」をつくること。それが使命だと近藤さんは決めている。一人の教員の安心と成長の先に、幾人もの子らの笑顔と幸福もある。