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〈3子どもの居場所〉 みんなが「居たい」「行きたい」校長室

 聖教新聞2024年9月3日付

 

 新潟県のその小学校の校長室は、いつもドアが開け放たれたまま。20分間のなかやすみ、そして昼休みの時間になると、児童が次々と入ってくる。

 校長の児玉しげるさん(副本部長)がうれしそうに呼びかけた。「さあ今日は何をして遊ぼうか」

 戸棚から出した玩具はボードゲームやカードゲーム、ご当地かるた等、盛りだくさん。児玉さんは子どもたちの様子を笑顔で見守り、時にじって一緒に盛り上がる。

 「校長室」というと、おごそかで入りづらいイメージがあったが……この学校の児童にとっては「楽しい所!」「休める所!」「校長先生とおしゃべりする所!」らしい。心の充電〟をたっぷりできた子どもたちは、授業に元気に戻っていく。

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 なぜ開放するのか。児童たちにとって学校が、「居たい・行きたい場所」となるために、「まず校長の部屋をそんな場所にしなければと思ったからです」(児玉さん)。

 創価大学13期生。卒業後、郷里の新潟で小学校教員に。結婚後、佐渡島に赴任した期間中、幼い二人のわが子にとって「行きたくなる場所」が、島の創価学会の会館だったという。

 いつもそこには、笑顔で迎えてくれる創価家族がいて、一緒に思い切り遊んでくれて、何でも話を聞いて、めてくれて─居場所〟のありがたさ、そこに居る大人の存在の大切さを、親子してかみ締めた。

 2年前、現任校に校長として着任した際、教職員に伝えた信条がある。「子どもにとって最大の教育環境は、私たち教職員にほかなりません」

 子どもたちは、大人の「言葉」「表情」「まなざし」「振る舞い」「しぐさ」から、その「心」を鋭敏に感じ取り、安心感と自信を得て、学びへと向かっていく。ゆえに教職員が心に余裕を持ち、常に学び続ける姿勢で子どもと関わっていくことが大切だ。

 児玉さんは宣言した。「私みずからが模範を示します。そして、教職員の皆さんが心理的安全性を感じられる存在となれるよう、人間力と指導力を磨き続けていきます」。教職員にとって最大の職場環境は、校長の私自身である─と。

 児玉さんの朝は、〝学校の幸福責任者〟としてすべての児童とその家族、そして全教職員の健康・無事故・幸せを、真剣に祈ることから始まる。

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 登校時、校門に立って笑顔であいさつ。児童の表情一つ、声一つから心身の健康状態をみ取ろうと、目と耳と心をます。授業時間中は各クラスを見て回り、児童の様子はもちろん、教員の工夫や奮闘にも着目。「いい雰囲気でしたね」「あの問いの投げかけは素晴らしい!」「私も勉強になりました」と励ましのフィードバック〟を欠かさない。

 日常の何げないおしゃべりの中で、また「学校だより」の発行を通し、一貫して発信しているメッセージは「心のSOS〟があれば、いつでも話してね」。だから校長室は開かれている。放課後に教職員が「ちょっといいですか」と、気軽に相談しに来ることも少なくない。不登校気味だった児童がここで笑顔を取り戻し、晴れの卒業式を迎えられた時は、どんなにうれしかったか。

 「いつでも話を聞いてもらえる」という安心感が、心を軽くする。すぐ相談できるつながりが、問題の早期発見と改善にも直結する。それは子どもでも大人でも同じだろう。夏休み明けの今は、児童の不安や疲れが表れやすい時期でもある。

 時計の針が、休み時間の開始時刻を指した。数人の児童たちが、あしばやにいつもの場所へ向かう。「今日は何をして遊ぼうかな」。聞いてもらいたい話も、いっぱいある。笑顔の校長先生が待っている。

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