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〈11言葉のチカラ〉 「一言」を大事にする人は「心」を大切にできる人

聖教新聞2025年4月23日付

 

 「ひとこと」を大事にする人は

 「心」を大切にできる人

 

 教員とは一面、〝空気〟をつくる仕事かもしれない。教室で、学校のあちこちで飛び交う「言葉」によって生み出され、子どもたちがそのせんさいな「心」に吸い込む空気である。

 東大阪市で公立中学校教諭を務める長井美智子さん(副白ゆり長)は、「だからこそひとこと一言を意識しています」。

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 生徒に安心と勇気を広げる言葉か。不安をもたらし、やる気をぐものになっていないか。「ペップトーク」と呼ばれるコミュニケーションスキルを、教育実践に取り入れてきた。「ペップ」は英語で「元気・活気・活力」との意味である。

 2月末に取材した折、長井さんが顧問を務めていたバドミントン部の部員とのやり取りで、その一端を垣間見た。

 下級生をもり立てる立場の先輩たちに「一人一人のことを、しっかり見てくれているね」「安心して任せられるよ。ありがとう!」──部員たちの目が変わる。プレーにも前向きな変化が現れる。

 生徒たち自身もそのスキルを学び、実践してきたことで、「友達が増えた」「自分も元気になれる」と実感しているという。

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 ポイントは「『できていない点』ではなく『できている点』に焦点を当てる」こと。そして、「受容・承認・行動・激励」の4つのステップを踏むことが肝要らしい。

 まず相手の状況や心情を「ありのまま受け止める」。例えば部活動の試合前。「本番前は緊張しちゃうよね」「自分も不安になるタイプだから、よく分かるよ」等々。続いて、その状況や心情のとらえ方を転換し、「でも緊張するのは、真剣に頑張ってきた証拠じゃないかな」等と承認する。

 ここで人は「気持ちを分かってもらえた」という安心感を土台に、「そんなプラスの見方もできるのか」と希望を抱く。そして「最善を尽くそう」等と行動をうながされた時に勇気が生まれ、「あなたなら大丈夫!」等と激励された時に自信がいてくるのである。

 たかが一言。されど一言──その重みを長井さん自身、中学時代にかみ締めた。クラスメートへの暴言が横行する教室。空気に息苦しさを覚えるほど。そんな中で「安心の居場所」となっていたのが、創価学会未来部の会合だったという。

 担当者は、いつも温かく「よく来てくれたね!」と迎えてくれた。不安や悩みを口にすれば、「実は自分もね……」と共感し、「でもだからこそ、人の痛みや苦しみが分かる人になれると思うの」と励ましてくれた。

 池田先生から激励の書籍『青春対話』が届いたのも、その頃である。「たとえ諸君が、自分で自分をだめだと思っても、私はそうは思わない。全員が使命の人であることを疑わない」──この言葉に触れた時、「子どもたちを勇気づける教師になろうと、心から思ったんです」(長井さん)。

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 前年度まで、小中一貫教育コーディネーターを務めた。小学校と中学校をつなぐ〝かなめ〟である。校長の理解のもと、「ペップティーチャー」の資格(一般財団法人日本ペップトーク普及協会)を取得。児童会や生徒会で理念や技術を共有した。互いの良い所を書いて伝え合う「ペップカード」の取り組みを通じ、校内の雰囲気も変わった。

 「生徒を元気にする側が、まず元気に」と教職員同士で励まし合う場面も増えた。何よりの実りは、「人も自分も大切にする言葉って何だろう」と語り合う「対話の文化」がはぐくまれたことだろう。

 先日、長井さんは定期異動に伴い、別の中学校に赴任した。何度経験しても、新しい環境には不安と緊張がつきまとう。いわんや子どもたちのそれは、いかばかりか。

 生徒の心に思いをはせ、わが心の思いを響かせて、一言一言をつむいでいく。「大丈夫だよ!」

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